ハギ ガーデニング知識
No.6
オミナエシ

ガーデニングに関する知識や知恵・技(わざ)を記述します。
皆さんの知恵と技もぜひお聞かせください♪

万葉に詠まれた有用植物

  

万葉集は5世紀半ば〜8世紀、飛鳥時代から奈良・平安時代にかけて作られた短歌、長歌、4516首を20巻におさめた我が国最古の歌集です。その中では、野の草や木を詠んだ歌が多く、約1700首に及び、登場する植物の種類は150数種にのぼるといわれています。
◆150数種のうち美しさをめでた植物は約50種、ほかは食用、薬用、衣料、染料、建築材に用いられた植物が大半を占めており、万葉時代の生活と植物の関わりがとても深かったことが伺えます。
◆万葉集の歌の題材となった植物の多くは、その姿や名前を題材にしたものですが、中には明らかにその利用法を詠ったものがあります。有用植物は必ずしもその美しさや景色の見事さを詠んだものではありませんが、生活そのものに基づいたのびやかさがあります。万葉の人々にとっては植物は観賞するだけでなく、生活に密着したものであったことがわかります。
◆このページでは、万葉集から当時の植物の利用について詠われた歌を紹介します。

  

◆【染料植物
●[アカネ]:(あかね、茜、赤根、など) [アカネ科の多年性つる性植物]
大伴の 見つとは言はじ あかねさし 照れる月夜に(ただ)に逢へりとも
[賀茂大王(かものおおきみ)]
「大伴の三津(難波の港湾の名前)ではないが、見たとはいわないでおきましょう。あかあかと照る月夜にまさにお逢いしていても・・」

  

●[ムラサキ]:(紫草、紫、など) [ムラサキ科の多年草]
紫は 灰さすものぞ 海石榴市(つばきち)の 八十の(ちまた)に 逢える児や誰
[作者不詳]
「紫染めには灰を使うのですよ。椿市(つばいち:奈良県桜井市金屋付近)での八十の辻道で逢っているあなたはどなたですか?」

  

●[ベニバナ]:(くれなゐ、紅、など) [キク科の越年草]
紅の 花にしあらば 衣手に 染め付け持ちて 行くべく思ほゆ
[作者不詳]
「紅花で衣を染めようと思うのですが、目立つ色なので人に気づかれてしまう。(美しいあの人に近づきたいが、逢ったら気持があらわにでて人に感づかれてしまうでしょうね)」

  

●[ツユクサ]:(つきくさ、月草など) [ツユクサ科の一年草]
月草に 衣色どり 摺らめども うつろふ色と 言ふが苦しさ
[作者不詳]
「ツユクサで衣を彩るために摺りたいのですが変色しやすいので迷います。」 変色しやすいは、心変わりしやすいとかけている。


  

◆【繊維植物
●[アサ]:(麻、朝、安佐、など) [クワ科の一年草]
麻衣 着ればなつかし 紀の国の 妹背(いもせ)の山に 麻蒔く吾妹(わぎも)
[藤原 卿(ふじわら きょう)]
「麻の衣を着ているのも何かのご縁でしょう。紀伊の国の妹背の山で麻の種を蒔いているあなたとは」

  

●[クズ]:(葛、田葛、など) [マメ科のつる性の多年草]
(つるぎ)(しり) 鞘に入野(いりの)に 葛引く吾妹(わぎも) 真 袖もち 着せてむとかも 夏草刈るも
[柿本人麻呂 歌集]
「入野で葛の繊維を採っている君、衣にして着せてくれようと夏草刈っているよ」 葛は草に埋めて発酵させて繊維を採った。

  

●[ヒシ]:(菱) [ヒシ科の池などに生える一年草]
君がため 浮沼(うきぬ)の池の 菱採むと 我が染めし袖 濡れにけるかも
作者不詳
「あなたのために浮沼の池の菱を摘んでいたら、私が染めた袖が濡れてしまいました」

  

●[セリ]:(芹、芹子、世理、など) [セリ科の多年草・春の七草の一つ]
あかねさす 昼は田賜びて ぬばたきの 夜の(いとま)に 摘める芹これ
葛城王(かつらぎおう)
「昼間は田んぼを分ける作業に追われていたので、夜の寸暇に摘んだ芹ですよ」 芹の包みに添えた歌である。


  

◆【食用植物
●[アワ]:(粟、安波、など) [イネ科の植物]
足柄の 箱根の山に 粟蒔きて 実となれるを あはなくても怪し
作者不詳
「足柄の箱根の山に粟を蒔いてもう実ったというのに、逢わないなんておかしいですね」 「粟」と「あわない」をかけている。

  

●[イネ]:(稲、伊禰、など) [イネ科の一年草]
住吉の 岸を田に()り 蒔きし稲 かくて刈るまで 逢はぬ君かも
作者不詳
「住吉の岸を田にして蒔いた稲を、刈りとるまでになっても逢っていない君よ」

  

●[ヨメナ]:(うはぎ、宇波疑、菟芽子、など) [キク科の多年草]
春日野に 煙立つ見ゆ 娘子等(おとめら)し 春野の菟芽子(うはぎ) 摘みて煮らしも
作者不詳
「春日野に煙が見えます。乙女たちが春の野のヨメナを摘んで煮ているのでしょう」

  

●[クワ]:(桑、具波、など) [クワ科の木本]
筑波嶺の 新桑繭(にひくはまよ)の 衣はあれど 君が御衣(みけし)し あやに着欲しむ
[作者不詳]
「筑波山の桑の新葉で育った蚕の繭からできた絹の衣はあるのですが、あなたのお召し物をどんなにか着たいものです」


  

◆【本ホームページ上の関連記事
本ホームページに掲載の「万葉集に詠まれた植物の歌」はつぎのとおりです。
万葉の山野草展 :万葉集にみる秋の植物
●「万葉集の植物を詠んだ歌」は、下記ページにもありますのでご覧下さい。
[タチバナ]: 四季の手入れ・バックナンバー スダチ
[秋の七草]: 四季の手入れ・バックナンバー キキョウ
[カキツバタ]: 四季の手入れ・バックナンバー アイリス類
[アカネ・ムラサキ]: 四季の手入れ・バックナンバー ハクチョウゲ
[ヤマブキ]: 四季の手入れ・バックナンバー ヤマブキ


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