今回は、サルスベリを紹介します。サルスベリは樹皮が滑らかなので、猿も滑り落ちるところから名づけられました。また別名のヒャクジッコウ（百日紅）は、７月から９月まで百日間も次々と咲き続けることに由来しています。盛夏の花の少ない時季に咲く貴重な花木です。紅色のほか白色、淡紫色など変わった花色を見るのも楽しいですね。樹皮の滑らかさは独特であり、幼少時、寺社の境内で樹皮をさすり、「こちょこちょの木」と呼んだ記憶もあります。色々な名前をもち郷愁を感じる花木ですね。

サルスベリ

◆中国南部原産で本州、四国、九州、沖縄に植栽されている落葉高木です。７月〜９月ごろ、円錐花序をなして紅い花が次々と咲きます。花弁は６個で円く、ちりめんじわがあり、基部は約１ｃｍの細長い爪になっている。雄しべは多数あり、そのうち６本が高く突き出ている。果実は球形。樹皮は赤褐色、なめらかで小枝は四稜がある。葉は互生し、だ円形、長さ３〜６ｃｍで柄がなく、小枝と花序には毛がない。

◆サルスベリは３種類あります。花が白色のシロサルスベリ、淡紫色のウスムラサキサルスベリ、矮性種の一才サルスベリです。一才サルスベリは樹高２ｍくらいの紅花で、花房は小さいが花つきがよく、狭い庭や鉢植えに適します｡一才サルスベリの改良種のヒメサルスベリはさらに小さくて花をよくつけますので鉢植えには最適です。

◆このほかにサルスベリの類似種としてシマサルスベリとムラサキサルスベリがあります。シマサルスベリは奄美諸島、台湾、中国中部に分布して白い花が咲き、２〜３ｍｍの葉柄があり、小枝と花序に毛があり樹皮は白色が強い。樹形が立性で広い庭や公園、街路樹向きです｡ムラサキサルスベリはサルスベリとシマサルスベリの雑種で、花は淡紅色、葉の下面と花序に微毛があります。

◆サルスベリは暖地性の樹木ですが耐寒性がありますので東北地方でも植栽が可能です。土質はとくに選ばなく、やせ地や日陰地以外はよく生育します。また、吸肥力が強い木ですので、有機質の富む肥沃な湿潤地が生育に適します。

◆サルスベリの仕立て方には２種類あります。１つは自然形仕立てです。サルスベリは放任しても２〜３ｍ程度の高さになると幹の先が自然に分かれし、自然に樹形を整えます。直幹の幹に似合う仕立て方です。小枝が密生し花房は小さくなりますが花が多く咲きます。また落葉後の細かく枝分かれした小枝先を観賞することができます。ただし場所を占有しますので広い庭でないといけません。

◆もう１つは剪定重視の仕立てです。この仕立ては花が十分に眺められる利点があります。斜幹の幹に似合う仕立て方です。強く切りもどすと勢いのよい当年生の枝が出て、大きな花が咲きます。毎年同じ位置から切りもどします。つまり、秋から冬の剪定で切り口から伸びた前年生の枝は全部切り落とします。

◆サルスベリには病害虫が発生しやすい。害虫ではアブラムシとシンクイムシである。羽のあるアブラムシは葉裏に寄生し産卵し繁殖する。葉がアブラムシの分泌物でべっとりするとスス病源菌が繁殖し、葉や小枝が真っ黒になり葉は落葉して花が咲かない。シンクイムシは当年生の枝が完全に伸びきらないうちに枝先に浸入し、枝の勢いをそぎ枝分かれをさせ、その結果花がつかなくなる。

◆病気ではウドンコ病です。この病気は通風が悪いと多く発生する。とくに梅雨あけに多く発生します。当年生の枝が順調に生育しツボミがふくらみはじめるころ、葉やつぼみ、さらに軟弱な枝などにまで白い粉をふきます。ついには開花が妨げられます。病害虫防除には早期発見と早期薬剤散布、冬期の薬剤散布（機械油乳剤や石灰硫黄合剤）も効果的です。

◆サルスベリ手入れのポイントはこちら♪

◆当家のサルスベリはご親戚からいただいた幼木を育成した。いただいた幼木を太らせるため直幹で仕立て、幹の径が４〜５ｃｍに太ったところで池縁に移植を行った。
◆斜幹のサルスベリは、池の上に斜めに張り出している。池といっても水が張ってない池である。６年〜７年前には錦鯉も泳いでいた。池の上に張り出ているサルスベリにはアブラムシが発生する。消毒をしないとお盆にはよい花が観られない。錦鯉に被害を与えないように池を覆い、消毒を行う作業には多大な労力が必要であった。苦渋の選択の末、錦鯉をあきらめ、お盆のサルスベリだけを観賞することにした。
◆錦鯉が越冬していた一段深い丸い「よどみ」だけは常に水が張り、ここに置いた木の根っこに寄せ植えしたマツ、イヌツゲ、モミジの盆栽風寄せ植えの一品が、干からびた池に少しだけ彩りを与えてくれています。