◆スダチの原産地は定かではありませんが、徳島県には350年以上も生きつづける古木があるそうです。ユズの偶発実生と考えられており、古くから徳島県下ではこの果汁を食酢として用いてきました。
◆【スダチの特性】
●大低木性で幼木期には樹勢が少し弱い性質があります。成木になると扁球形の樹姿になります。枝は斜めに開き密生し鋭い刺があります。葉は小形で小さい翼があり、葉身は披針形です。
花は新梢の先端に単生します。果形は扁球形で小さく、30〜40g程度、果面は滑らかで油胞は細かく不明瞭。果実の切断面は独特の香りがあります。 果肉は淡黄色で柔軟、多汁で舌先に溶けやすく、酸味が強く芳香があります。種子は12個前後ありますが大きくはありません。
●耐寒性も比較的強く、ウンシュウミカンの栽培できる気温の地域であれば栽培可能です。 土壌は有機質に富む肥沃な地質で表土が深く、排水のよい場所が適します。また、南西の日当たりが十分な所よりも、60〜70%の日当たりの場所で栽培したほうが、芳香の強い良果が得られます。
◆【スダチの品種】
●[メンスダチ]
刺は細く、果面は滑らかで外観も美しく、もっとも品質に優れています。
●[オンスダチ]
刺は剛大で、果面は粗く厚い。
●[種なしスダチ]
刺は細小で果実は小さく、種子がありません。
◆【スダチの利用】
●11月上旬に果実は色づきますが、スダチは色づくと風味が落ちますので、8月中旬
ごろ緑果のうちに収穫するのが最善です。果実は2つに切り果汁を絞り食酢にします。レモンの代わりに用いることもできます。
●スダチの枝は分岐が多く密生します。葉の大きさも小さく、枝の伸びが比較的少ないため、鉢植え栽培に適します。鉢植え栽培で観賞に食用に楽しみませんか?
◆【万葉植物としてのタチバナ】
●タチバナは現在でも野生化している日本古来からのカンキツです。万葉集にも68首も詠まれています。この数はハギ、ウメ、マツに次いで4番目に多い数です。(ちなみに5番目はサクラです。)
●カンキツ類は昔から縁起のよい吉祥木とされてきました。常緑の葉をもつ吉兆の植物としての食品であるからでしょう。ダイダイなども「家系が永く続く」などのいわれで、今でもお正月には珍重されていますね。
●こんな吉祥木のタチバナ(スダチの祖先?)を詠んだ万葉の歌を1首どうぞ!
タチバナは 実さへ花さへ その葉さへ 枝に霜降れど いや常葉の木
[聖武天皇]
「タチバナは実や花や葉に霜が降り注いでも、常緑の葉がますます栄えるめでたい木である」 |