◆キンカンは樹高1〜2mの常緑低木です。ミカン科のキンカン属に属し、中国原産です。日本にはマルキンカンが最も早く徳川時代以前に渡来し、続いてナガキンカン、マメキンカン、ニンポーキンカンが渡来しました。さらに、大正時代にはフクシュウキンカンが入ってきました。
◆ニンポーキンカンは1828年に中国逝江省・寧波(ニンポー)の船が遠州灘で難破し、清水港に船体修理のため寄港した際に、船員より砂糖漬けの果実をもらい受け、その種をまいたのが始まりとされています。
◆【キンカンの性質】
●キンカンはキンカン属ですが、カンキツ属(キンカン、カラタチ以外のミカン類)と異なる点は、葉に網脈がなく有脂で果皮に甘味があり、室数がきわめて少ないことです。
●低木で枝は細かく密生し、葉は小さくて両端がとがり翼葉がほとんどありません。花は白色で小さく、ミカン類では最も遅く7月に多く咲きます。次いで9〜10月で、5月の開花はきわめてまれです。果実も7月に咲いた花に多く結実します。
●果実はきわめて小さいのですが、果皮はやや厚く甘味があり香気がありますので、果皮も生食できます。
◆【キンカンの種類】
●[ナガキンカン]:熟期12〜2月・果実10〜12g・長だ円形・食用
●[マルキンカン]:熟期12〜2月・果実6〜8g・球形・食用
●[ニンポーキンカン]:熟期12〜2月・果実11〜13g・球短卵形・食用
●[マメキンカン]:熟期11〜12月・果実1g・球形・観賞用
◆【キンカンの管理】
●キンカンは生産用としては、主としてミカン産地でニンポーキンカンやナガキンカンが多く栽培されています。熟期が遅いものでは果実をつけたまま越冬しますので、冬期に温度が下がるところでは寒冷紗やコモで防寒します。
●細かい枝が多く発生しますが、生長が遅いので枝は切らずに大切に育てます。樹冠内部にも光が入るように、不要枝を間引く間引き剪定を行ないます。肥料はウンシュウミカンよりは少なめに与えます。
◆【キンカンの利用】
●樹形が小さくコンパクトで、常緑の葉と黄金色の果実の取り合わせが美しく、観賞価値も高いので、古来から家庭果樹として親しまれてきました。鉢植え栽培にも適します。盆栽用としてマメキンカンもおもしろい素材です。
●果実は開花時期によって熟度も異なりますので、着色を始めたものから採取します。果実が小さいので収穫にも労力を要しますが、お互いの果実を傷つけないように果梗は短く切ります。
●果実は果皮に含まれるビタミン類も多く生食にされるほか、砂糖漬け、甘露煮、果実酒、缶詰などに利用されます。
●キンカンは風邪の初期、特にせきに薬効があります。甘露煮はお正月の一品に加えられていますが、風邪への薬効もその理由の1つではないでしょうか。
●果実酒はたん、せき止めに効くほか健胃にも効果があります。キンカン500g、焼酎1.8リットル、氷砂糖200gの割合です。キンカンを水洗い後、ふきんで水けをとりそのまま用います。2か月ほど冷暗所で保存し、果実を絞ってから取り出します。就寝前に20ml程度服用すると効果があります。
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