◆【ナンテンの性質】
●本州の関東南部以西、四国、九州に自生します。中国中部、インドにも分布するメギ科の高さ1〜3mの常緑低木です。果実は球形の液果ですが、水分は少なく、11月〜12月に赤く熟し、円錐状に多数ついて美しい。花は六弁の小白花が6月ごろ、茎の頂部に大形の円錐花序をなして咲く。葉は互生し大形の三回羽状複葉で、全体に関節があり、小葉は広披針形、長さ3〜7cmです。
◆【類似品種】
[シロミナンテン]:果実が黄白色です。
[フジナンテン]:果実が淡紫色です。
[ウルミナンテン]:果実が橙色です。
[キンシナンテン]:茎が短く節間がつまり小葉が短く糸状です。
[イカダナンテン]:葉柄が合着していかだ状になっています。
[シナナンテン]:チョウセンナンテンともいわれ、小葉が卵状だ円形で小形です。
[ササバナンテン]:小葉の軸が短縮しています。
◆【ナンテンの管理】
●樹勢は強健ですので植栽は東北地方まで可能です。冬の赤い実が美しく、「難を転じる」に通じるところから吉祥木として玄関脇などによく植えられます。 日陰や半日陰でもよく生育しますので、陰樹として扱われる場合が多いのですが、実を多くつけさせるためには、やはり日当たりのよい場所が生育に適します。土質はやや粘土質土壌が適しています。
●放任しますと上長生長を行ない、背丈が高くなっていきます。庭木としては1.5mほどが適当な高さでしょう。 実をつけた枝は翌年は開花しませんから、正月前に実を生花用に利用する際に低く切りつめます。また、丈が高すぎる枝や細い枝は適宜切りとり整理し、1株10本程度の株立ちにします。
●実つきをよくするためには、まず日当たりのよい場所を選びます。次にひどく乾燥する場所は避けましょう。窒素過多は実つきや秋の紅葉を悪くします。株を大きく作りあまり小さく分けないことも大切です。一方、小さい株でも数が多ければ結実はよくなります。
●シロミナンテンは赤実種よりも実つきが少し劣ります。生長もやや遅く実つきも遅れますが、気長に待ってやりましょう。
●ナンテンの受粉は6月の梅雨期になります。実つきをよくするには開花時期に雨に当てないことも大切なことです。梅雨の季節はナンテンの花穂に紙袋をかぶせたり、傘をかけてやったりすると実つきがよくなります。昔から雨の当たらない軒下に植栽されているナンテンを多く見かけます。軒下はナンテンの植栽には格好の場所といえます。
◆【ナンテンの利用・用途】
●ナンテンは玄関脇や通用口付近の前栽によく用いられます。前述した「難を転じる」ことに由来した吉祥木であるからでしょう。
●ナンテンは生薬名を南天実または南天葉といい、ぜんそく、百日ぜきなどのせき止めに、乾燥した実を煎じて飲みます。また、船酔いに生の葉を噛んでおく・すり傷には葉をすりつぶしてつける・魚を煮るとき生の葉をちぎって入れると魚のもちがよくなる・・などの効用があります。
●葉には解毒成分が含まれているため、昔から食物を贈る場合にナンテンの葉を添える習慣があります。食中毒にはナンテンの葉をすった汁が効き目があるといわれます。また、ハシやツマヨウジの材料にもされますね。ナンテンのツマヨウジを使いながらお酒を飲むと悪酔いしないともいわれます。
●鉢植えや盆栽にもよく使われます。鉢植え用のキンシナンテンは昔から多くの品種が作り出され、今でも古典園芸植物として根強い人気があります。
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